気遣いイケメン、石垣哲郎(あの夏で待ってる)

 アニメを見るときの基準って何だろう、と振り返るとけっこうキャラクターデザインだったりして、ファーストインプレッションは大事なんだなぁと思う。ちょっと浅はかなだとも思わなくはないけど。
 でもこのアニメは第一話でなんとものすごく引き込んでくる。と思ったらすごい評判のいいアニメでした。情報に疎いのは損もするけど、でもまだまだ感動が待ってると思えば……
 そしてこのアニメすごいのですよ。ラブコメとSFとちょこっとロボットがほどよく混じってて。キャラクターデザインもだけれど、人間のかわいらしさとか、いけずさとか諸々を、セリフの丁寧さで表現してくる(声優さん大変だったろうなぁとか勝手に労いたくなる)。それに負けず劣らずのキャラクターの表情の細かさがあって、もう第一話を見るだけで誰が誰を想ってるかわかっちゃう。加えて画が綺麗で舞台となってる町の風景が美しく描かれているのもいい。
 とまぁアニメが大事に作られてるって再確認させてくれるようなアニメだと思いました。


あらすじ

 夏が始まる。青春真っただ中の高校一年生、主人公と親友の男子の二人、同級生の女子の二人、の四人組は「なんかしなくちゃ」、主人公の8mmカメラで映画でも撮ろうか、と学校の教室で話に花を咲かせていた。そんな中、主人公はカメラを持ってうろうろ。気付くと吸いよせられるように、外の赤毛の女子のほうへ。
 彼女は転校してきた三年生。何故か目で追う、気になってしまう主人公。その先輩が助け舟のおかげで映画作りに参加することに。加えて帰り道、たまたまその先輩と出会うと何故か住む場所も決まってないという話から、ひょんな展開、一緒に住むことに。
 しかし実はその転校生の先輩は宇宙人。互いに想いを寄せ合っていく二人と、それを取り巻く仲間たちの想いも相まって怒涛の青春物語。


一点突破

 宇宙人との青春が宇宙人の映画を撮りながら進んでいく。なんだこの面白いアニメはっ!と思う。段々と仲良くなっていく様子とか、想いの辿っていく様子が丁寧に描かれていく。
 その中で石垣哲郎。
 主人公の親友。彼はアニメのイケメン役でよくラブレターなんかをもらってる。でも嫌味なところなんて全くなくて、むしろ泥臭いタイプ。主人公を好いている女の子とは幼馴染で、実はその子のことが好き。石垣哲郎はこれまでも自分が好きなことは抑えつけて、その幼馴染の女の子の恋を応援していたでしょう。作中で主人公が学校を休んだ時も、煽るようなこともして、自分の好きな子が主人公のもとに行くよう仕向けたり。しかし、その時もう一人の女子が、石垣哲郎に
「蹴られる。人の恋路を邪魔すると」と伝える。石垣哲郎は
「邪魔してるかぁ?これでも応援しているつもりだぜ」と返すと、
「してるよ、邪魔。哲郎くんは蹴られるよ、自分に。
 それは、たぶんね。痛いよ」
 その時の石垣哲郎の表情。物憂いような憂鬱な表情をする。口元は笑いながら、悲しみをたたえた目は女の子と合わせられず、横のほうを向いてしまう。
 何とも乙な男だ。しかし、彼はそれだけではない。なんせ先輩を映画作りに引き入れたのも石垣哲郎なのだ。
 主人公がその先輩に気が向いていることに気付いてしまった石垣哲郎は、幼馴染の女の子の主人公への想いに気付いていながら、しかもその為に自分の想いを押し殺していながら、主人公の恋の応援までするのでした。それが第一話、先輩を見てもんもんとする主人公を横に、
 「よしっ、決めた!」と声を上げ、そのまま先輩のところに映画作りの手伝いを直談判しにいくシーンに込められているのでした。
 しかし、そんなイケメン気遣いの男も、
 自分が好きな女の子の主人公への恋を応援しながら、その主人公の先輩への恋を応援するという分裂じみた状況に耐えづらくなっていく。しかも自分の恋心を押し殺しながらだ。
 何度も何度も悲しみの中に突き落とされながら物語が進む。その中で彼の思春期も人知れず猛威をふるい、石垣哲郎の身を焼いていく。それでいて幼馴染の応援をやめられない。
 まだまだ物語真ん中あたりのとあるシーン。
 石垣哲郎は幼馴染の女の子から、主人公と先輩の間に入れない事を悟った、映画作りのためにも口をつぐむことに決めた、と話され、石垣哲郎一人で独断、主人公の元へ。幼馴染の恋心を主人公に伝えてしまう。
 この石垣哲郎の心が凄まじい。何を思って誰のために何のために、きっと色々ぐちゃぐちゃしながらの行動だったでしょう。人間そんなに強かない。それでも幼馴染のために最善と思える行動をぶち込んでくる。イケメン。
 それからも彼の様々な表情があり、
 もう一人の女の子とのドラマチックあり、
 まわりのみんなが自身の気持ちに正直になっていく。
 それにどれだけの覚悟が必要でそれがどれだけ強いことか、
 自分の弱さにも気づいてしまって、
 そんなイケメンがとうとう一世一代の……


余談

 しかして主人公は石垣哲郎の親友、霧島海人。その主人公と宇宙人の先輩との恋やいかに!
 熱いクライマックス!
 エンディングテーマのアニメーションがまた良くて、キャラクターとそのシルエットが順番に映されるんだけども、登場人物たちの思春期がそのまま投影されえているようで、シンプルながらじんわり。

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