あらすじ
波の国での橋を作り終えるまでの護衛、という任務を依頼された主人公ナルトと強力な教員忍者カカシを含む四人組。ギャングや盗賊相手のランクの低い依頼かと思いきや、着いてみると強い忍者が次から次へと。橋の建設を妨害しているギャングが波の国を牛耳るため、交通まで独占しようと凶悪な忍・桃地再不斬(モモチザブザ)を雇っていました。
相手に忍がいることを隠したウソ含みだったこともあり、ご破算となりかけたところ、良心と、加えてナルトが自分の成長のためにもと、依頼を続行することに。
桃地 再不斬(モモチ ザブザ)
水の国・霧隠れの里の忍者だった再不斬は、無音殺人術(サイレントキリング)の達人として知れわたる凶悪な忍者でした。その凶悪さは〝血霧の里〟とまで呼ばれた霧隠れの里で養成されてしまいます。再不斬は〝生徒二人一組での殺し合い〟という卒業試験で、少年だったにも関わらず100人以上いる生徒を全員殺していまいます。
そんな凶悪な忍者である再不斬がしょうもないギャングに雇われていたのは野望があったからでした。水影の暗殺を企み失敗した再不斬は、数人の部下と抜け忍となり、
「必ずオレはこの国に帰ってくる…
いつか水の国を手中にしてみせる!!」
と暗躍するのでした。そして国で出会った、秘めた力を持つ少年・白(ハク)と行動を共にし続けます。
白(ハク)
「魔鏡氷晶」という秘術を使える、特別な能力を持つ血族だった白。しかしその能力の特異さから恐れられ、水の国では血族であることがバレると死が待っていました。同じくその血を持った母の秘密が父にばれてしまい、父が母を殺し、そして白のことも殺そうとする。しかし気付けば、白が父を殺してしまっていました。
「自分がこの世にまるで……必要とされない存在」
と強く思い知らされた白を、拾い上げたのが再不斬でした。しかもその忌まわしい血こそを必要としてくれた再不斬に、人生における喜びを感じ、戦いの中で再不斬に命を捧げるのでした。
一点突破
再不斬は戦いの中で何度も白を〝道具〟呼ばわりします。そしてそれを利用していただけだとも。白はその言葉通り、再不斬とカカシとのギリギリの戦いで再不斬を危機から守るためにその身を捧げます。再不斬はそれを道具として褒め、加えて、
「忍の世界には利用する人間と利用される人間のどちらかしかしかいない。
オレたち忍はただの道具だ。
オレが欲しかったのはあいつの血であいつ自身じゃない」
と話す再不斬。しかしそれを聞いたナルトは、純粋に再不斬を思い遣る白の為に激高する。再不斬は聞いていないようでいるけれど、動くこともできない。カカシはナルトを止めようとする。しかしやめないナルト。
叫ばれ続けるナルトの言葉が再不斬に涙を流させる。白は優しすぎたと語り、
「忍も人間だ…
感情のない道具にはなれないのかもな……」
と負けを認めます。
結局、ギャングがその再不斬すら裏切り、利益を全て手に入れようと行動しますが、そこを再不斬が命に代えて討ちます。
ギャングも死に、体が動かなくなるほど消耗した再不斬は、死んでしまった白の元へ自分を運んでくれるよう、カカシに頼みました。そして、
「ずっと側にいたんだ…
せめて最後もお前の側で…」
「…できるなら…
…お前と…同じ所に…行きてェなぁ…
…オレも…」
と呟き、絶命します。
再不斬は白が死んだ直後から、それでも続くカカシとの戦いで精彩を欠き、カカシをとらえ切れなくなっていました。そのことにカカシは、
「今のお前ではオレには勝てないよ」
「お前は気付いていない……」
と話し、その答えをだいぶ後、再不斬と白が魂を操られる術で再登場したときに、
「お前はあの時、(盾となりすでに死んだ)白を斬ることを躊躇った」
「そしてお前の内心は白の死による動揺を隠しきれなかった」
と語ります。
それほど再不斬にとって白は大事な存在だった。
その昔、浮浪児のような白と再不斬が初めて出会った時、再不斬が白に、
「お前みたいなガキは誰にも必要とされず、
この先自由も夢もなくのたれ死ぬ…」と話す。しかし
「………お兄ちゃんも…ボクと同じ目してる…」
と笑顔で返す白に、再不斬が動揺してしまう描写があります。
実際に〝この世にまるで必要とされていない〟と思い知った白に同じ目だと見抜かれた再不斬が白を拾う。
そのことで白は再不斬のみに唯一必要とされ、同時に再不斬は白の夢となり、再不斬も白に必要とされる存在になりました。
そんな二人が共に生きながら、白は再不斬の夢のために生きることが夢だといいました。
再不斬は「水の国を手中にしてみせる」と話しますが、カカシとの戦いでもカカシが、
「お前の野望は多くの人を犠牲にする。
そういうのは…
忍のやることじゃあないんだよ」というと、
「…そんなこと知るか…
オレは理想のために戦ってきた…
そしてそれはこれからも変わらん!!」と返します。
再不斬にとっての「理想」とは何だったのでしょう。
ここからは多分な妄想です。
しかして「理想」のために戦って〝きた〟という再不斬は、過去に水影相手にクーデターを起こしています。それこそが理想のための戦いだった。しかし失敗はしたものの〝必ず戻ってくる〟と話す再不斬の横にはいつも白がいる。
〝この先夢もなく〟といわれた白は再不斬のおかげで夢を持ち、
もしも再不斬が白のおかげで夢を持つとしたら。
白が自分を唯一必要とする再不斬のために生きるように、
再不斬が自分を唯一必要とする白のために生きていたとしたら。
忌み嫌われた血族には死が待つだけ、という国を変える為には。
と、再不斬が考えたとしたら。と勝手ながら妄想します。
しかし白は戦いの最中死んでしまいます。もう再不斬には本当に戦う理由、「理想のため」を失くしてしまったんじゃないか。本当は忍として、道具としてではなく、人間として互いの故郷で暮らしたかっただけなんじゃないかと思えてしょうがない。
カカシが〝そういうのは忍のやることじゃない〟といったのは、
〝忍〟が〝道具〟だと口にし続け、そう思い込もうとし続けすぎて、忍であることに辟易すらしたであろう再不斬にはまさに、な言葉だったんじゃないかと思えるのです。
「お前らの死に様と涙はお互いの絆そのものだったよ」と、
二人の絆にカカシが太鼓判を押すほどだったのです。
余談
再不斬のいた霧隠れの里は水の国。しかし白が両親との過去を話すとき漫画だと「霧の国」と話すけど、アニメでは「水の国」という。〝霧の国〟の存在は調べても出てこないので、〝水の国〟か〝霧隠れの里〟のいい間違いということでいいのかしら。
ギャグあり、感動ありの忍者漫画でその世界の過酷さを目の当たりにさせてくれた物語、その中のキャラクターは今も忘れることなく生きております。
そしてこの経験から学んだ忍道をナルトはずっと抱いて成長し続ける。大事な物語だ!
おわり
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