サムライうさぎ
この漫画とってもコミカルな絵柄でありながら、江戸時代の下級武士というある意味一番自由の少ない身分として生きる宇田川伍助が、階級社会の窮屈さ、武士の体面など、不必要と思えるほどの規範意識に煩悶しながらも、妻である志乃のため〝天下一の剣術道場を開く!!!〟というところから物語は始まります。
宇田川伍助
武家に生まれたものの、父と兄が相次いで切腹に処され、若くして一家の主になる。 上司の体面にばかり気を使って生きることを窮屈に思いつつも何もできないでいたが、結婚をしたことで何か身を立て出世しようと剣術道場の門下生となる。しかし入ってみれば、相も変わらず身分と体面でがちがち。落胆とみじめさで押し潰れてしまいそうになった伍助を救ったのは妻の他に捉われない振る舞いや考え方だった。
特にうさぎのどこがそんなに好きかと聞いたときの
〝うさぎはねェ…ピョンピョン跳ねて月まで飛ぼうと…がんばってるヤツラだからね!!〟
という一風変わってはいるけれど、自由な感性に目を開かされ、自分が信じるものの為に生きていこうと思うようになる。
宇田川志乃
兄と二人で暮らしていたが、兄の勧めで宇田川伍助と結婚することに。
いつも笑顔が絶えず、伍助だけではなく誰に対しても平等な優しさを持ち合わせているが、言動が独特で大勢の理解からは遠く、そのことで苦労することもある。それも持ち前の楽観さで過ごしているが、実は心の思いを奥へとしまい込みやすく、伍助に対しての気持ちや、過去の話などが物語が進むことで少しずつ垣間見えてくる。
一点突破
本筋は天下一の剣術道場を目指すことにあり、そこまでの道筋を歩んでいきます。道場どうしよう、門下生はどうしよう、思いもよらぬ危機が!とか。そして現在天下一の道場である講武館に勝つ!というところに進んでいきます。魅力的なキャラクターが登場し、ジャンプらしいバトル感も楽しく読めます。
しかしサムライうさぎで一番重要なのは宇田川夫婦。伍助がいて、志乃がいること。その二人のほっこりな話もありますし、時にはすれ違いのような場面もありますし、しょげてしまうような場面もあります。でも伍助も志乃もちゃんとピョンピョンとうさぎに負けじと跳ね頑張ります。それがもっともっと見ていたいなぁと思わせる。
二人とも寛容で、互いを大きく受け入れ合ってはいるものの、それだけでは分かり合えないことも多くあって、そんな中で二人が少しずつ心を開くようになっていく。それは互いに伝え合っていくことだと二人を見ていて、思わされる部分です。
サムライうさぎは全八巻と短め。でも最終巻のあとがきで書かれてることですが、
「自分はどうやらLOVEっぽいものが好きらしい」
というところから始まったサムライうさぎ。それが余すところなく伝わるい漫画です。
恋とか、愛とか
サムライうさぎを読むと、恋とか愛とか〝恋愛〟という言葉が一段と素晴らしいものに思える。それは多分、自己完結を超えてくるからです。色んな作品に触れて、頭でこねくり回して、楽しいなあと思って、どれかにとことん愛を注ぐとか、他にも様々なことが自分の中だけで完結できてしまうんじゃないかと考え始めたりします。しかしサムライうさぎを読むと、宇田川夫妻を見ると、相互的なもの、個を超える豊かさを確かめさせてくれる。
宇田川夫妻は今日も幸せです。
余談
少年ジャンプでの連載はなくなってしまった作者の福島鉄平さん。ですが他での連載があったり、短編集なんかもすごく読み応えのある漫画を描き続けてくれています。良い加減の絶妙なところを突いてきてなんだかうずうずしてきます。気になった方は是非読んでみてください!
おわり
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