あんたが珍獣 (第22話)
食料も水も貯えがなかったところに見えた無人島。ついでに新たな仲間でもいないものかと上陸し、森に入ると珍獣だらけ、なんだか変わった森だなぁ進んでみると、声が聞こえる。「立ち去れい!!」と話す声は森の番人と名乗り、ちょっと抜けた話し方でどうにか引き返させようとしてくる。しかし気にせず進む船長ルフィに「森の裁きを受けろォ!!!」、弾丸が飛んでくる。しかし効かないゴム人間ルフィ。弾丸の飛んできた方角に森を分け入ると、宝箱の上に巨大なたわし。めちゃくちゃに怪しい存在、そこから足が生え、突然動き出す。中に入っていたのはたわし人間…ただの人間ガイモンさんでした。ガイモンさんは底の抜けた宝箱に、体育座りでハマって抜け出せなくなっていた。そしてそのままたった一人での20年という切なさに、ルフィはただ一言「ばかみてェ」と返すのでした。話ははずみルフィのワンピースという目標、グランドラインへの冒険を語られ、ガイモンさんは自分の未練について語り出す。
実は自分も海賊だった。仲間たちと宝の地図を手に、この島に上陸するも壊れたからっぽの宝箱一個あるだけで他に何も見つからない。そろそろと諦め島を出ようとするときに、ガイモンは船長が腰を据えてた岩場の上だけ、誰も見ていないんじゃないかと考えのぼってみた。するとそこには宝箱が。驚き皆に知らせようとするが岩場の上から落ちて気絶してしまう。その時に箱にハマってしまった。目を覚ますと、船は遠く、やっちまった。しかし考えてみれば、これで宝は独り占め、やったと思ったが箱から抜けれず岩場も登れない。そして20年、財宝狙いの海賊たちを〝森の裁き〟で追い払い続けていた。
意気投合したルフィたちは宝を代わりに取ってきてあげようと申し出る。ルフィがゴムの手を伸ばし岩場の上にのぼり宝箱を確認するも、渡すのはいやだ、と言い出す。ルフィの仲間が〝冗談はやめて早く〟と怒鳴るも聞かない。そしてガイモンは悟るのでした。
宝箱は全部空っぽでした。ガイモンさんも最初に見た時、閉じた宝箱を確認しただけでした。ガイモンさんも20年の間考えないようにしてはいたけれど、地図の存在する宝にはよくあることだ、と涙ながらにいいます。ルフィはこの事態を笑い飛ばし、
「これだけバカみちまったら
後は〝ワンピース〟しかねェよ!!
もう一回おれと
海賊やろう!!」とガイモンさんを誘うのでした。
ガイモンさんは誘いには感動しましたが島に残ることにします。実は島には珍獣を狙うやつらが多く来るので〝森の番人〟を続けたいといいます。
「あいつらを見捨てるわけにはいかねェ!!」
とかっこいいガイモンさんに、
「おっさんも珍獣だもんな」
と台無しにするルフィ。
そしてワンピースを見つけて、世界を買っちまえと励ましの声を背に、
また新たな冒険へ出航するのでした。
みんな大好きガイモンさん
ガイモンさん、みんな好きですよね。ワンピースが始まって少し経った後に、必ず話題にのぼったガイモンさん。その衝撃(笑撃)のフォルムが頭から離れず、思い出し笑いに悩まされるほどでした。
しかしこの話、切ない。人の20年をひっくり返すような真実に、子供ながら世の中には知らない方が幸せでいれることがある、としらしめた物語でした。それから何年も経って見返してみれば、珍獣を守る珍獣として生きていくのも悪くないことかなとも思いますが。
この話で一番面白いのはコミカルとシリアスのふり幅のでかさですね。珍獣と呼ぶにふさわしいフォルムにちょっと抜けたおっさんが、ルフィと相まってバカみたいに可笑しい。それでいて長い年月を背負わせておいての真実にルフィの優しさが相まって切ない。このふり幅がこの物語を忘れられない話としているのでしょう。
しかしこの話が救われたのはルフィがガイモンさんを仲間に誘ったことだと今にして思う。その前の宝箱は渡さない、という優しさも十分に伝わりながら、それでもガイモンさんが森の番人を選んだことが嬉しい。ルフィが海賊になることを勧めなかったとしても、ガイモンさんは結局は森の番人をしていたと思う。でも〝海賊を断って、森の番人をすることに決めた〟という誇りはきっと強いものじゃないかなぁと思いました。
今でもどこかの島で、珍獣に愛し愛されながら暮らしていることでしょう。
余談
原作とアニメではこの話の時期が違っていて、原作ではルフィとナミ(と船で寝続けるゾロ)だけですが、アニメではウソップを加えゾロも起きて参加します。話の筋は同じですが見てみるとそれはそれでコミカル。
おわり
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