あらすじ
人々に個性という特殊な能力の発現する世界。ヒーロー育成する学校、雄英高校は文化祭を間近に控える。雄英高校は様々なトラブルを乗り越えた直後の文化祭だったため、小さくとも異変があれば即中止することすら視野に入れながら、生徒たちは楽しんで準備を進めていた。そこに黒い影が。
動画サイトに迷惑行為をアップし続けるジェントル・クリミナル。彼が次の標的に選んだのが雄英の文化祭だった。度重なるトラブルの中で行われる文化祭とはいかがなものかと文化祭当日に雄英高校に侵入する計画を立てる。
当日、犯行前のルーティンとして喫茶店でティータイムを過ごし、さぁ計画を遂行をしようとしたところ、たまたま買い物のため校外に出ていた雄英生徒である主人公に見つかってしまい……。
ジェントル・クリミナル
動画サイトに迷惑行為をアップロードし続けるヴィラン(悪党)であるジェントル・クリミナル。自身のことを義賊と説明し、世間への警鐘や悪を懲らしめることが目的だと話す。しかし動画が広まることはなく、思い悩んでいるところにハッキングのプロであるラブラバが現れ、二人で動画を企画・作成することで徐々に世間に認知され始め、「歴史に、後世に名を遺す」と息を巻く。
しかしそもそもジェントル・クリミナルはヒーローを志す若者だった。ヒーローを育てる学校に通っていながら、あまりにも成績が振るわず、学校に居場所がなくなりかけていた。そんなある日、事故に遭遇し反射的に個性を使って人を助けようとしたら、それがかえって正規のヒーローの妨害となり、事故当事者の大怪我を招いてしまう。
学校を退学し、家での居場所も失くし、孤独で無為な生活を過ごす。そして数年後、偶然出会った元同級生に話しかけるが、全く自分を憶えていなかったことにショックを受け、ヴィランへの道に進んでいってしまった。
触れた無機物に弾性を付与する個性「エラスティシティ」を持つ。
ラブラバ(あいばまなみ)
学生時代、同級生に恋を告白したが、そもそものストーカーの気質を隠さず手紙にしたためてしまい、異常だと笑われてしまい世間から隔絶した生活を送る。そこでジェントル・クリミナルの動画に出会い、それを自分にとっての光だと信じ、ハッキングの力で会いに行き、コンビとしてジェントル・クリミナルの動画投稿を手助けする。
愛するものに愛を囁くことで、その対象者を短時間パワーアップさせるという個性「愛」を持つ。
一点突破
ジェントルと主人公デクの戦い
今までにない偉業を、と計画を完遂させたいジェントルと文化祭を無事に開催したいデクとの戦いは熾烈なもの。特にラブラバからの愛を受けたジェントルは個性を存分に発揮したデクにも劣らず、その思いをぶつけあいました。
しかし結果はデクの勝利。正義は守られました。が、この戦い単純に悪は悪、善は善と簡単分けるだけの話ではないと思うところです。
ジェントル・クリミナルの行っていることは許されることではなく、もちろん裁かれるべきもの。もともと軽薄なところもあり、考えが深いところまで至らない性格かもしれない。それに加えて目立ちたがり、世にいう承認欲求というものがもともと高かったのだろう。
度重なる絶望と性格の資質が迷惑動画投稿者というところまで自身を追いやる形になっていった。それは厳しい言い方をするなら自業自得。
しかし単純にこの人もったいなかったなと思わされるのです。せっかくの志もさることながら、学生時代自分がヒーローになることに疑いを持っておらず、動画投稿にかける情熱がヒーロー活動のほうへ向いていれば、もしくはヒーローでなくてもトランポリンを作り出すような個性でたくさんの人々を笑顔にできる資質があったのだろうと思います。語りの軽妙さも、周りを和ませ楽しませることができたはずだ。
もしかしたら通っていた学校が悪かったかもしれない、いい先生に出会っていれば、とか。親が悪かったのかも(短い登場シーンでも、息子であるジェントルのことを信用しているようでない)、とか。考えられることは多くある。戦いの後に主人公に対し、自分は「ヒーロー落後者の成れの果てだ」と語る。主人公はそれを自分事として切り離すことができないでいる。
ジェントルは最後ラブラバの為だけに戦い抜いた。結果負けはしたが、ジェントルの笑顔がラブラバを救ったのは確かだった。それにラブラバの愛がジェントルを助けていたのも確かだった。個性は嘘をつかないものです。
この二人がヒーロー事務所か問題解決の相談所のようなものを経営する様が柔らかく想像できる。固い絆のあるパートナーシップ、問題を抱えた相談者も思わず笑ってしまうようなジェントルの人柄、いつもただよっている品のいい紅茶の香り。想像できませんかね。もったいないなぁ、と本当に思う。
そんな二人の話!
おわり
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