というわけで、ワイルドハーフ。もう20年以上前の漫画になるんですね。しかし今読んでもとっても楽しめる、何よりすんごい優しさがたっぷり詰まった漫画です。特に動物を飼ったことのある(特に犬っ)人には涙なしには読めない回がいくつもいくつもあるんじゃないかしら。
そしてそんなワイルドハーフの中で一番好きだったのが銀星!見た目もかっこいいですが、思いを秘めてもにじみ出る一途さとか、そんなのを小さかった自分が感じ取っていたのかなぁ。感じ取っていたんだろうなぁ。
ワイルドハーフ
ちまたでまことしやかに流れる噂、困りごとがあったとき〝ワイルドハーフ〟という探偵に助けを求めると、100%解決してくれる。そんな噂に半信半疑だった主人公のタケトはある朝道端の野良犬に弁当を丸ごと食べられてしまう。学校を終え、朝の野良犬を思い出し腹を立てながら家に帰ると、警察官であった兄が事件に巻き込まれてしまったことを知る。
探偵ワイルドハーフにでも頼めないものかと頭悩ますタケト。そこに朝の野良犬が現れ、自分はサルサという名のワイルドハーフであると、人の言葉で話し出した。タケトは面食らったものの、ワイルドハーフに助けをこい、無事に事件を解決に導いた。
その後探偵ワイルドハーフは獣人族という種族であることを明かしつつも、それでも犬としてタケトの家住みつくことになった。事件を解決したり、色々ハプニングを起こしたりしながら情を深め合うタケトとサルサ。そして人間と情を深めた獣人族は人型に変身できるようになり、何倍もの力を手に入れまた様々なトラブルに巻き込まれたり。
そして物語は進み、銀星の元飼い主・烏丸(からすま)カオルと出会い、人と獣人族の逃れられぬ悲劇を知ることになる。
人と獣人族の悲劇
獣人族であること隠しながら銀星と烏丸は犬と人という立場であっても思い合いながら暮らしていた。その情はとても深く、お互い分かち難いものだった。
しかし銀星は知っていた。獣人族が人に情を寄せすぎると、自身がワーウルフという人狼になって、その情を寄せた人間を喰らってしまうということを。実際に銀星の父はワーウルフとなり飼い主を殺して、他の人間に殺処分された。新たに飼われた場所で兄は不幸の直前に自分の命を絶った。そして自分は孤独に生きると決めていたのに烏丸に出会い、そのぬくもりに触れてしまった。
しかしこれ以上思いを寄せるわけにはいかない、と常に頭をよぎりながら生活をしていたある日、烏丸が事故にあい両目を失ってしまう。銀星は自分の視力と引き換えに烏丸の目を治してやり、その日から姿を消した。烏丸はそれから今に至るまでずっと銀星を探し続けている。
一点突破
その後も銀星は烏丸にばれないように、常に離れず烏丸のことをサポートしていた。(例えば事故を起こしてバイクはぼろぼろでも烏丸はかすり傷だったり)
ただ銀星は怖かったのだ。自身がワーウルフになって烏丸を殺してしまうことが。そうならないために17年もの間、烏丸に自分の存在を隠し続けていた。
この切なさたるやです。タケトとサルサは自分たちの情を信じる、といいます。しかし銀星は二人とは違い幼い頃に悲劇を目の当たりにし、そこから何年も何年もその恐怖を抱き続けました。父も失くし兄も失くし、その後孤独を自身に課すことは恐怖を増長させる助けにすらなったことでしょう。だからすごいのはその銀星の心を開かせた烏丸だと思います。しかしその烏丸への情が増すごとに、ワーウルフとなってしまう恐怖も同じく増してしまう銀星。こんなの苦しいに決まってます。そのあと姿を消しても、近づきたいけど近づけない、情と恐怖、烏丸の一番の願いが自分であるのにそれを叶えてやることができない、とまるで相反する思いのぶつかり合いをいくつもいくつも抱き続けながら、それでも捨て去ってしまうことのできない17年間です。どれほどの強い情を銀星が(もちろん烏丸も)持ち続けたかと思うと胸が締め付けられますね。
その後は、タケトとサルサの奮闘によりサルサのワーウルフをはねのけ、その場で共に戦った銀星の中のワーウルフの因子のようなものも一緒に消失させることができました。そして銀星の存在を感じ取り駆け付けた烏丸と銀星の再会。 私の人生に記憶された最高に幸せなシーンの一つですね。
余談
銀星は獣人族であること、人の言葉を話せることをこの時点でも烏丸はまだ知りません。それを知っていくのはまだちょっと先の話。
しかし銀星かっこいい。すごいきらきらしゅっとしているのにたれ耳なところとか、実はけっこう年齢がいっていて達観しているようなのに、烏丸のことになると大人げなかったり。
キャラクター投票だったか、ファンレターだったか、人生で唯一はがきを買って送ったのも銀星でした。(正月にジャンプからお返しに頂いたワイルドハーフ年賀状は今でも大切に保管してある)
おわり
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